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麻酔関連文献紹介
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2013年7月2日 更新

帝王切開術中の昇圧剤投与−2
臨床研究でのエフェドリン投与とフェニレフリン投与の比較

1970年前後の動物実験から、子宮血流を保つためにはエフェドリンを使用すべき、という考えが1970‐80年代は定着していた。しかし、1990年前後になり、それを覆す臨床データが出始める。
その頃の論文を2編紹介する(4, 5)。 これらの論文以降、多くの臨床研究の結果が得られていくが、エフェドリンとフェニレフリンの立場が入れ替わるに値するエビデンスを積み上げるまでにその後長い月日を要している。

・硬膜外麻酔下帝王切開における低血圧の昇圧剤による治療(4)

母体の循環変動と新生児の酸塩基平衡について硬膜外麻酔下での帝王切開を予定した127人について評価を行った。インピーダンスカーディオグラフを使用し、1回拍出量、左室駆出率、左室拡張末期容積を計測した。臍帯静脈、臍帯動脈のpO2、pCO2、pH、余剰塩基、乳酸値、ピルビン酸値、余剰乳酸、乳酸/ピルビン酸比も計測した。患者は以下の3群に分けた。
グループ1(n=53):昇圧剤を必要としなかった群。
グループ2(n=37):血圧が90mmHgを下回った群。
グループ3(n=37):血圧が83mmHgから62mmHgに低下し、収縮期血圧100mmHgを保つようにフェニレフリンが100μgが投与された群。
新生児のApgarスコアと酸塩基状態は3群間で有意差を認めなかった。フェニレフリンによる低血圧の治療でも胎児にアシドーシスは起こらなかった。


・脊髄くも膜下麻酔下帝王切開症例における低血圧防止のためのフェニレフリン(5)

予定帝王切開症例に対しての脊髄くも膜下麻酔後、低血圧防止のためのフェニレフリン、エフェドリンの比較を目的とした。
大学関連施設の産科病棟で60人の予定帝王切開症例を対象としてランダム化二重盲検で行った。
患者はランダムにエフェドリン10mg静脈投与群(n=29)、フェニレフリン80μg静脈投与群(n=31)に割り付けられ、収縮期血圧100mmHgを保つように投与された。
母体の静脈血、臍帯動脈、臍帯静脈の血液ガスが計測され、新生児のApgarスコアとEarly Neonatal Neurobehavior Scale(ENNS)スコアが評価された。
エフェドリン群では臍帯動脈pHは7.28±0.01(mean±SEM)、pCO2は56.6±1.4mmHg、不足塩基は2.2±0.04meq。
フェニレフリン群では臍帯動脈pHは7.32±0.01、pCO2は52.1±1.3mmHg、不足塩基は0.38±0.35meqであった。
全て基準値内であるが、臍帯動脈の平均pH、pCO2、不足塩基で群間の有意差が認められた。Apgarスコア、ENNSスコア、母体の嘔気、嘔吐の頻度に有意差は認められなかった。

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